活版WEST2025in岐阜に行って、活版印刷の魅力を知ることができた

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かつて印刷技法の主流であった活版印刷ですが、現代ではその独特な印刷の風合いと手間や技術を要することから、あえて活版印刷を表現に利用することがあります。

大量に生産可能な現代の商業印刷とは異なる、作り手の想いや表現が伝わる活版印刷の世界を知るのにぴったりなイベントが岐阜メディアコスモスにて開催されました。

私もかねてより活版印刷に興味があったので、イベントで初めて活版印刷を目の当たりにすることで、より印刷や作品作りの世界に引き込まれていきました。

活版WESTとは

2017年から関西を中心に4度開催してきた活版印刷のイベント。今では活版キャラバンと称して、全国を巡るイベントに発展し、今年は岐阜にやってきました。
※2025年11月1日~2日

会場は「みんなの森ぎふメディアコスモス」で、国内全国と海外からも出展者が訪れます。

会場の岐阜をイメージした活版を組んで、サイズの違う活字を一つ一つ組んでいます。このメインビジュアルは岐阜の活版印刷屋ORGAN活版印刷室が組んでいます。

会場の様子。メディアコスモスのイベントフロアにて、ブースがロの字に展開されているので、中をぐるぐる回って見られます。かなり人が多く、私はじっくり90分滞在しましたが常に人の流れは絶えない印象でした。

オリジナルグッズ

出典:活版WEST

広島県尾道の活版カムパネルラによるデザインの公式グッズを展開。Tシャツとトートバッグ、アクリルキーホルダーを各3種類ずつで、Tシャツの背面は出店者ロゴがずらっと並んでインパクトありました。

活版印刷カードガチャ

会場入り口付近で公式グッズが購入可能で、すぐそばに活版印刷カードのガチャガチャもあります。200円だったのでプチ土産にいいですね。

活版印刷とは

会場の活版印刷機
豚の図版が印刷される

そもそも活版印刷とは簡単に言うと、文字(活字)や図版を組み合わせた版に、インキをまんべんなくつけて、紙に転写する印刷技法です。つまり原理だけ見ればハンコと同じですね。

ハンコと違うのは、文字や図形などの版を組み合わせて印字できること。ハンコはその決まった名前や絵柄しか押せません。

また、活版印刷は紙面に独特の風合いや高級感を漂わせた凹凸を残せるのも魅力の一つです。

活版WEST2025の出展者

今回の戦利品

活版カムパネルラ(広島)
ことぶく(広島)
備前凸版工作所(岡山)
長谷川印刷所 活版部(徳島)
ゆるやか文庫(愛媛)
有限会社日高印刷(福岡)
NINE LETTERPRESS(熊本)
穀雨(大分)
中村活版印刷所(沖縄)
ORGAN活版印刷室(岐阜)
名古屋芸術大学 活版部(愛知)
増本 綾(京都)
りてん堂(京都)
CAPPAN STUDIO(大阪・京都・奈良)※11/1のみ
大枝活版室(大阪)
河童堂(大阪)
桜ノ宮 活版倉庫(大阪)
Echos Design & Letterpress(大阪)

中野活版印刷所(岩手)
かく田 戯画堂(東京)
九ポ堂(東京)
まんまる〇(東京)
ALBATRO DESIGN / PRINT + PLANT(東京)
Bird Design Letterpress(東京)
HUMORABO(東京)
株式会社 築地活字(神奈川)
AUI-AŌ Design(神奈川)
COFFE PAPER PRESS(日本)
富ヶ谷レタープレス(日本)
AOTO LETTERPRESS(香港)
ditto ditto(香港)
Doyoupress(韓国)
PAPERWORK Letterpress & Stationery(台湾)

今回私が個人的に気になったブースから8事業者紹介します。あれこれ欲しいものはたくさんありましたが、ちょっとずつ戦利品をゲットしていきました。

ORGAN活版印刷室(岐阜)

主催地である岐阜から唯一の出展。長良川流域の持続可能な地域づくりを支援する団体です。岐阜市の築120年の町家を拠点にワークショップ等行い、新たな地域コミュニティを目指しています。そんな活動の最中に廃業する紙問屋から沢山の活字や備品、活版印刷機を買い取り始まったのがORGAN活版印刷室です。

冒頭で述べた本イベントのフライヤーにて岐阜をイメージした活字を組んだのがORGAN活版印刷室です。実物の組版を見ると人の手によって作られた印刷物であるイメージが具体的になりますね。

戦利品

ポストカード×3
活字+活版メッセージ

ポストカードは無料で配布されていたもので、活版印刷の風合いが感じられる紙に印刷されています。黄色い紙はバフン紙といって繊維が多く入った紙で厚みがあります。由来は馬糞ですが馬糞そのものは混じっていません笑

ブース前の500円ガチャで、ランダムに入ってる活字と一言カード。『銃弾』の2文字に『ゆめかなふ』とは、これいかに。スタッフが「銃弾で夢叶うって」と笑っていました。

Official
ORGAN活版印刷室
ORGAN活版印刷室

かく田 戯画堂(東京)

戯を見てせざるは遊なきなり

山藤章二

この言葉をモットーに楽しいレタープレスを紹介するかく田さん。

活版印刷機は非常に高価でスペースも必要としますが、個人でも手軽に楽しめるレタープレスやエンボス、簡易箔押しなどを提案してくれます。活版を楽しむことにハードルを感じさせず「これで十分」という自作のキットや代替インキの話を聞かせてくださいました。

会場ではワークショップをしていました。必要な材料を買えば自分でも作れるよと気前よく色々と教えてくださり、さっそく今度試してみようと思っています。

Instagram
かく田 戯画堂
かく田 戯画堂

九ポ堂(東京)

活版印刷による作品制作と販売をしており、代表作は活版印刷による「架空商店街ハガキ」シリーズ。身近で親しみやすく、それでいてどこかクスリとしてしまうモノを提供されています。ちなみに屋号の由来は「9ポイントの活字」から。

とてもユーモアあふれる高品質な作品があり、ほとんどが発案からデザイン、印刷まで一貫してご自身で行っていると伺いました。発想力とデザインセンスが抜群です。

戦利品

架空商店街ハガキ×3
テレスコープコースター

テレスコープコースターは星座の活版印刷に、黒と透明のインキでうっすら星座のイメージが表れています。私の誕生月のおとめ座を1枚購入。

架空商店街ハガキシリーズの発想力、ありそうでないデザイン、ショートストーリーなどが面白いです。猫又翻訳事務所は夏目漱石の本名が金之助でであることを知っていると腑に落ちる素晴らしい作品でした。

少し不思議な紙雑貨を製作し、文具メーカーとのコラボも行っています。

Official
九ポ堂
九ポ堂

ゆるやか文庫(愛媛)

愛媛県内子町の町並みにあったお店の一角から始まった小さな私設図書室。平安時代の「図書寮」と「紙屋院」の関係をイメージした、つくり手・繋ぎ手・使い手が一緒になる場を目指しています。内子町御祓地区に拠点を移し、廃校となった小学校の図個室から和紙・手漉き和紙の印刷所を開始、印刷を通じて和紙の魅力を伝えています。

ひとこと栞みくじが楽しそうだったので1枚引いていきました。

思わぬ方へ進むのも面白い
戦利品

ひとこと栞みくじ

いつもは選ばない道を選んでみたり、いつもは買わないものを買ってみたり、いつもは読まない本を読んでみたり。そういった気まぐれの出会いがなにかのきっかけになることもありそうですね。

和紙は活版印刷のメッセージがくっきり表れるのでそれも綺麗でした。

Echos Design & Letterpress(大阪)

紙と印刷にまつわるものづくりをされており、オリジナルデザインで一枚から印刷が行えます。またオリジナル商品のパッケージや、ブランドの世界観を表現する活版印刷の制作物まで対応しています。

戦利品

切手風活版印刷シール

春・夏・秋・冬のそれぞれの庭をテーマにした切手風のシール。フランス語でそれぞれの植物名を記載しています。

Echos Design & Letterpress

鮮やかで温かみのある、伝える制作物を得意とされているような印象でした。

切手風デザインの活版印刷シールがかわいいので、手紙やサンクスカード等に使おうかと思います。ちなみにこちらのデザインは冬の庭シリーズで、左上からスノードロップ、ヒイラギ、クリスマスローズ、冬の庭、2段目に松ぼっくり、水仙、金柑、パンジーでした。

築地活字(神奈川)

1919年創業以来、活版印刷用金属活字の鋳造販売業を行う。活字の歴史的重み、手間のかかる重み、物質的な重み、これらの重みを背負いながら100年以上経営された信頼と実績があります。

戦利品

活字とホルダー

猫の足跡の活字と、ハンコのように手で押すためのホルダーがセットでした。このホルダーもオリジナルで、手軽に一文字の活字を押すのにぴったりです。

紙に猫の足跡の凹凸が柔らかく残る感じがお洒落です。

Official
築地活字
築地活字

COFFEE PAPER PRESS(日本)

珈琲(nearly coffee)・福祉(HUMORABO)・活版印刷(紙成屋)、異分野各三者による協働プロジェクト。業種の垣根を越えて新たな価値の創出に取り組まれています。人気商品は活版印刷の生みの親グーテンベルクおじさんグッズだそう。

個人的にコーヒーや印刷・出版物は大好きですし、仕事で福祉関係に携わることもあるので、勝手に親和性を感じていました。

戦利品

nearly coffee M(マゼンタ)ブレンド

色の3原色からイメージしたマゼンタはカシス、ラズベリーを彷彿とさせるフレーバーのブレンドコーヒーです。エチオピアとルワンダの豆が使用されていました。マゼンタカラーの活版印刷されたカードも付属。

華やかな酸味でとても美味しいコーヒーでした。30gなので15gを2回に分けて飲みました。

3分野に精通した人たちだからできるプロジェクトで、それぞれの相乗効果が楽しめるであろう出展でした。

PAPERWORK(台湾)

台湾・台北市にある活版印刷工房。昔ながらの活版印刷機と伝統的な印刷技法を用いて、個性豊かなステーショナリーを制作しています。

他に香港や韓国からの出展もあり、活版印刷が世界をまたいで岐阜につなげてくれることがすごい。

戦利品

台湾ポストカード

活版印刷されたショップカード、おまけでもらったシール、袋に印字されたハチワレ活版猫も可愛い。ノートや小さなメモなど、すべてが活版印刷の風合いを生かしながら、日本にはないデザインセンスで描かれています。

Official
PAPERWORK
PAPERWORK

活版印刷の世界が広がるイベント

出展者による販売ブースだけで30以上あり見ごたえ満載でしたが、活版印刷そのものの啓発にも力を入れていました。

活版印刷の歴史、文化、使用する道具など、商業印刷としての活用はされずとも、古き良き技術として現代でも特別な価値をもって受け継がれています。

業務用の活版印刷機や膨大な活字を集めるとなると非常にハードルが高いですが、簡易的に楽しめる「大人の科学マガジン 小さな活版印刷機」やエンボス・箔押しなどにも使われるダイカットマシンなど紹介されていました。

公式サイトをチェック
活版WEST
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ABOUT ME
谷口有威
谷口有威
ブロガー/デザイナー
写真を撮るのが好きで文章を書くことが得意でした。「好きなこと×得意なこと」で趣味や暮らしの記録を残しています。
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