廃校が生まれ変わった淡路島の複合施設『ei-to』を訪れてみた
淡路島旅行で宿泊したSAKIA STAYというホテル(こちらも学校をリニューアルした施設)で、淡路島一宮地区を中心とした謎解きイベントを教えてもらいました。
その際に当初の旅行プランにはなかったei-toという廃校を複合施設にリニューアルした場所に行ったのですが、ここが想像以上にボリュームのある観光となったので紹介します。


立ち止まり、考える。
かつて子どもたちの学びの場だった「旧江井小学校」は「ei-to」というあたらしい形で、また時を刻みはじめています。
なにかを大きく変えるのではなく、一度立ち止まり「今のままでいいのかな」と考えるきっかけを生み出す場所。捨てられるはずだったものにもう一度光をあてて、100年たっても残り続けるものづくり。この学校と同じで環境や持続可能性を理念に運営されています。
大人になると子供が小学校に入学でもしない限り、また学校に訪れる機会なんてありません。黒板、階段の踊り場、給食を運ぶためのエレベーター、小学生の頃を追憶するようで不思議な気分でした。
教室の窓から見える景色に海があるというのもいいですね。
ワークショップ
学校であるから当然敷地が広くテナントの数もけっこうあって、ひととおり見て回るだけでもそれなりに時間がかかります。
主にワークショップ系・ギャラリー・物販・カフェが集まっています。
ei-toの理念に則り環境配慮やリメイクなどを意識したショップでした。
screen print factory

自分だけのオリジナルTシャツが作れるシルクスクリーン体験。
図工室のような空間で、SURIMACCAという簡単にシルクスクリーンプリントを楽しめる道具を使います。絵を描くのが苦手な方でも、誰でも愛着ある1枚の服をつくることができます。


描いた絵やデータの持ち込みもできるようなので、事前に行くことを決めているならあらかじめデザインを用意しておくといいですね。
体験するには必ず予約が必要なのでscreen print factoryのページをチェックしてください。体験料や所要時間の目安も分かります。
Aizome factory / +C Coveross Laboratory


日本の伝統的な天然灰汁発酵建てで毎日管理をしている藍甕。貴重なその時に生まれる藍色を、一色に染めたり絞り染めをしたり、自分だけの一枚を作る体験ができます。
また服に抗菌・防臭・撥水・UVカットなど、機能性を付加する技術開発も行われています。化学的なアプローチからも、未来に向けた服作りの挑戦をされています。
workshop space(理科室)

元理科室を使ったものづくりを楽しむワークショップスペース。


理科室特有の床やガラス引き戸の棚が懐かしい気がします。
音楽室

音楽室にはポツンとバンドセットが設置されていました。


ギターなど弾ける状態か分かりませんが、ドラムをたたいている人はいました。
ミュージアム
線香の町として栄えた港町江井の歴史や文化に触れていきます。
線香組合(Awaji island incense)

兵庫県線香協同組合は、中小線香製造事業者15社の組織。地域に住まうすべての人が支えあいながら歩んできた線香づくり170年余りのまちづくりをさらに進化させ、未来へ承継することを目指して活動しています。


淡路島は国内の線香生産量の約7割を占めている日本一の線香の生産地です。
これは実際に現地に訪れるまで知りませんでした。たまねぎばかり有名であまり一般的に知られていない感じですよね。

線香の事業所が多い場所を車で窓を開けて走っていると、その町全体が線香の香りに包まれていました。
江井博物館(ei museum)


かつて淡路島各地にあった芝居小屋や、昭和30年代の台風などの歴史の展示。

線香工場や船での出荷の様子などをジオラマにして、当時の情景を分かりやすく表現しています。
ショップ
ショップはどれもei-toの理念に通ずるものが何かしら感じられるものでした。
古着販売、端布の出ないバッグ、本来の役目とは異なってリメイクしたものなど、環境に配慮した未来へ繋がるものづくりを見られます。
gallery&shop

割烹着ブランド「kapoc」や藍衣ブランド「萌蘖 Hougetsu」など。
ちょっと値段の張るものが多かったので、ブランドの背景やストーリーを知った上でショップに訪れると、また見える視点が変わってくると思います。
used clothing store

Tシャツ、デニムなど、こだわりの古着が販売されています。不用品古着ではなく、セレクトショップにあるかのような、価値のある古着が多い印象でした。


私は服やファッションに明るくないのでその価値をはかれないですが、Levi’sのレアな品番っぽいデニムが3万円するのはたぶん納得。
ギャラリー
館内のいたるところにアートが展示されていて、学びの場であった学校にも溶け込むような洗練されたものを感じます。
廃材再生師 加治聖哉


役目を終え、死んでしまった「廃材」たちにもう一度「生命」を吹き込む
玄関から出迎えてくれる巨大な廃材の狼。このインパクトから建物に入った瞬間にei-toのコンセプトを感じてもらうようになっています。
加治聖哉さんはアート制作にとどまらず、子ども向けワークショップや地域活性など活動の幅を広げています。

art gallery


パリ、ストックホルムから突然ei-to にやってきたクリエイター5 人。1ヶ月ほど滞在制作をした彼らの作品を窓から見える江井の海とともに是非ご覧ください。
ファッションデザイナー、インテリア・プロダクトデザイナー、彫刻家など。ei-toの環境やコンセプトに賛同したクリエイターたちのアートを楽しめます。
詳しくはei-to magazineに掲載された日本を旅するクリエータ一。ei-toに訪れ、つくるもの。を参照ください。
図書室


まばらですが、本来教室だった場所にわずかな本を並べています。私は蔵書数が多い場所よりも、少なくても厳選して棚に面出しして並べてるのが好きです。
淡路島に関連する本やアート関連のものが多かった気がします。
Le Premier Cafe awajishima[カフェ]

校舎の一角にテラスを設けたお洒落なカフェ。ここだけ切り取ってみたら学校だとは思えない雰囲気です。

店内の跳び箱はインパクト抜群。
スペシャルティコーヒーを専門とし、世界大会実績のある焙煎士がいることなど、一線を画すクオリティのコーヒーを飲みたい人におすすめ。

歴史を背負って未来を見据える

廃校となった学校を新たな複合施設として活用しながら、コミュニティの場としても機能させていくには、その場所の信念やコンセプトが欠かせないと思います。
かつて小学校だった歴史や、地域の文化を受け継ぎながら、廃校を新たな価値へと変えていく──。持続性や環境への配慮を軸にした事業が集まる場所で、先人への敬意と、これから拓く未来の気配が共存していました。

